有名人です
「お前って、市原って、言うんだな」
「え、うん」
「全然知らなかった。みんな、お前のことはなんだっけ、か。クラスの長的イメージで呼んでるからさ」
「あ、それは委員長って、呼ばれてる」
「ああ、それそれ、委員長だったな」
「うん、そうだね」
僕は委員長だ。
そのことに間違いはない。
なのに、変なの。
なんか、それは僕じゃないと言いたくなった。
「市原って、いい名前だよな。なな、俺、お前のこと市原って、呼んでもいいか?」
「え、や、いいけど」
「じゃあ、市原。よし、市原」
うんうん。と、天野くんはしきりにうなずいた。
そして、ふと、僕の顔を見つめた。
「そういえば、俺の名前、市原はいつ覚えてくれたの?」
純粋に綺麗な顔で見られると、なんだか恥ずかしくて、僕は「いつでもいいだろ」なんて言ってしまった。
「それもそうだな」
と、天野くんは笑った。
君は有名人です。
君を知らない人なんていないと思う。
だって、天野くんは、その名前を呼ぶのですら、ためらわれてしまうほどに、
モテモテだもの。
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