担任に呼び出されたあなた




その日、職員室に殴りこみに行った、天野くんは植木先生に呼び出された。
僕はなんだか、自分がいけなかったような錯覚を感じたので、
相談室から出てくる、天野くんを待っていた。

「うわっ」

「うえぇえ!!」

急に扉が開いて、僕は驚いた。

「植木先生」

僕は声を絞り出した。
なんで、こんなにも頑張っているのだろうか。

「あの、その、天野くんは、その、えと」

正確にはなんて言えばいいのか、わからない。
ただ、彼はどうなったのか、気になるだけなのに。

僕がおどおどと口ごもっていると、植木先生が、

「市原、ちょっと、ここを頼んだぞ。俺はトイレに行ってくるからさ」

などと相談室に僕を放り投げ、自分はトイレに行った。

「なんで、こうなるんだろう」

溜息をついた。すると、後ろから、天野くんの声がした。

「クラスの長、お前どうしてここに?」

椅子から立ち上がり、天野くんは僕を見つめた。
あいかわらず、綺麗な顔だ。
髪の毛なんて、さらさらだし、瞳はキラキラしているし、なんていうの
説明しきれないくらいに整っている。

僕なんかとはまるで違った。

だから、初めて会ったその日に彼の名前も顔も一番に覚えた。
あの日、植木先生には照れ隠ししてけども、実際、一日で、クラス全員の名前と顔を果たして覚えられるだろうか?

たぶん、いや絶対に無理だと思う。

「どうしたんだ、立ち尽くして。お前、あいつになにか」

「されてないから」

「そうか。なら、いいんだ」

「うん」

沈黙。

僕はどうしようかと悩んだ。
何も無理に会話を続ける必要なんてないんだけども、
なんでだろうか…

言葉を探していた。





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