入部届けに帰宅部と書いて提出した




僕は学級委員長だ。
小学生の時からずっとずっと。

真面目だけが、取り柄だった。


だけど、こんな奴は初めて見た。


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その時、僕らは一年生だった。
部活とかいろいろと決めてばかりの大変な時期で、
僕はまた学級委員長を任された。
だから、部活届は出さなかった。

僕は一点集中型だから、学級委員長と部活とを両立できる自信がなかった。
それに、中途半端は嫌いだった。
やるからにはやりたい。
そんな面倒な性格だったし、
だって、どこにも入部したいって思えなかったから、

入部届は自宅の机の上。


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「どうされたんですか?」

担任の植木先生が何やら、悩んでいるようなので、学級委員長として声をかけた。
すると、先生は少し考えた後に、「天野翼」という人物の名前が書かれた入部届を僕に差し出した。

「天野って、知ってるよな」

先生はそう尋ねてき。もちろん知っていた。

「え、ああ、はい。僕の前の席の人ですよね」

「そうそう」

よく覚えていたな、とも、言わんばかりに、先生は驚いていた。
だから、軽く笑って

「クラスメイトの名前なんて一日で覚えました。委員長をやらせていただくからには、当然ですよ」

と僕は先生に、冗談半分におどけて見せた。けれど、すぐに本題に戻ることにした僕は、真面目に切り返す。

「で、天野くんがどうかしましたか?」

植木先生は一瞬、固まり「ああ」と笑って続けた。

「いや、たいしたことじゃないんだけど、ここを見てくれ」

「えっと、なになに『帰宅部に入部します』って?」

入部届には確かにそう書いてあった。
だけど、だから、どうしたというんだろう。

「なな、市原には悪いんだけど、天野に聞いてやってくれないか?」

「何を聞くんですか?」

「入部届は、どこの部にも属さないのなら、出さなくていいんだと」

「…はい、伝えておきます」

そう言って、僕は先生から、天野くんの入部届を預かった。

これが後の歯車が壊れる原因になるとも知らず、
僕は能天気に、

帰宅部って部活があったりしたら、どんな感じなのかな?

とか、考えていた。





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