鈍感なのか相手にされてないのか
=丹羽side=
「………」
あの悲惨なお茶はもうここにはなく、コップだけが残っていました。
いつの間に飲んで下さったのでしょうか。
俺は部長のディスクのまわりを何回も歩きました。
なんでしょう。
とても嬉しいんです。
「馬鹿」
「ぇ?」
気のせいでしょうか。
痛々しい声が聞こえました。
「気のせいじゃないですよ」
「うわっ!」
急に俺の前に、かわいらしい女の子が現れました。
確か、神崎課長と少し仲がいい社員さんです。
「だんまりですか?」
「え? あぁ。すみません。ちょっと、驚いてしまいまして…」
「あ、すみません。驚かすつもりはあったんです」
「うん。なら、いい……よ?」
あれ?
聞き間違いでしょうか?
聞き間違いですよね?
「ありがとうございます」
にぱっと女の子は笑いました。
さっきのは俺の聞き間違いだと思いました。
「……で、何かご用ですか?」
俺は一歩さがって尋ねました。
「丹羽くん。あのね、敬語めんどいから、やめるね。でね、私が言いにきたのは、部長のことなんですけど」
「小池部長がどうしたんですか?」
俺は三歩踏み出しました。
「何かあったんですか?」
「いえ、たいしたことじゃないの。えっと丹羽くんに聞きたいのはね、ラブ、なのか、ライクなのかってこと」
「何がですか?」
俺は視線を逸らしました。
「だから、部長のことだよ〜」
「なんでそんなこと聞くんですか?」
「それは…」
「言う必要ないでしょ? 見たらわかるよね。ガチで愛してるから。邪魔するなら、潰しますよ?」
「うん。ありがとう!」
………脅したら、御礼を言われてしまいました。どうしましょう。
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