悪いですか?
「遠藤にも、嫌われる覚悟できたんだ」
先輩はそう言った。
だけど、俺は、何を言われても、この人のことは嫌えないことを、心のどこかで知っていた。
「嫌いになんて、なりませんよ。きっと」
「いいんだ。気をつかってくれなくて。遠藤。俺、お前に嘘ついたんだ」
深刻な顔をして、先輩は俺を見つめた。
「嘘、ですか?」
俺は淡々と聞いた。
「うん。年上が好きなんていうのは、嘘。それに、俺も、女の人好きになれたことないんだ。ずっと、なかった。なれなかった」
先輩はうつむいた。
「ごめん。嘘ばっかついて、ごめん」
「そんなこと、気にしないでください」
ただ、俺が、先輩も男が好きなら、俺にも可能性はあるのかなって
考えてしまうのが嫌だった。
「てか、そんなことくらいで嫌いになれないですよ」
なれるわけがなかった。
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