いじけているだけです
「あ、そういえば、先輩。用事は、すんだんですか?」
「え、ああ、すんだよ。体育のレポート出してなくてさ。で、部室にかえってきたら、かわいい部員が寝てるし、どうしようかなって、考えていたら、こんな時間に」
先輩の携帯の時間を俺はただ見て、固まった。
「え、ええ、下校時刻すぎてるじゃないですか? てか、先輩、門限いいんですか?」
「いいんだよ」
「や、でも、先輩の家のかたは心配してるんじゃ…」
「まさかしないよ」
「なんでですか?」
「言ったんだ。俺。お見合いはしないって」
「でも、だからって」
そんなに急に、あんなにも先輩のことを大切にしていた家族の方は手のひらを返すだろうか?
「いじけているだけです。きっと。どんなやりとりがあったかなんて、俺、知りませんけど、もし、家族の方ともめたとしても、今はいじけているだけで、本当は心配なさってますって」
「だったら、いいのにな。完全に嫌われたみたいなんだよ」
「え?」
「ごめん。レポートなんて、嘘。ちょっと、家に帰って、話をしてきたんだ。で、遠藤にも話をしに来た」
「話をですか?」
「そうだよ」
先輩は俺のとなりに座った。
「遠藤にも、嫌われる覚悟できたんだ」
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