先輩の迷惑になりたくないんです
俺にとって先輩は特別な人だった。
絶対に傷つけたりしてはいけない人だった。
だから、俺が、俺なんかが、先輩にたいして恋心を持つなんて考えられなかった。
「俺は、年上が好きなんだ」
何気ない会話で先輩がそう言っていた日から、俺は先輩にたいして、敬語をつかうようにした。
自分自身に言い聞かせたかったのかもしれない。
この人は年上で、自分は年下なんだと。
「そういえば、どうしたの急に、敬語なんて」
「敬う気持ちがようやく芽生えたからですよ?」
「えー、遅いな」
そうやって、二人で笑い合った。
俺はいつか先輩を諦められると信じていた。
あんなにも好きだった親友を、今は本当の友情としての好きでいられるようになったからだ。
いつか、いつか、そうただの大切な人になって、
先輩を守り続けるそんな男になりたかった。
俺は先輩の迷惑にはなりたくなかった。
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