3
その日、俺は、ひたすらに泣いた。
ホント、馬鹿になるんじゃないかってくらいに、泣いて。
先輩はずっと俺のことをとなりで支えてくれた。
「俺、先輩のこと好きになるかもよ」
冗談のつもりで言った。
いや、俺は臆病者だった。
先輩がこのことで、距離をおかれたら怖かった。
上辺だけ、受け入れられても、心のどこかで距離をおかれるのはたえられない。
だから、信じてしまう前に、俺の頭をなでてくれる手が、引けばいいと思った。
なのに、先輩ときたら
「大丈夫。わかってる。男なら、誰でもいいわけじゃないでしょ?」
なんて言ってくれた。
「そうだよ…」
誰でもいいわけない。
なのに、なのに…
「わかってる。わかってるから、泣くな。笑っていたら、そのうちいいことあるし」
いいことなんて、ない。
そう思った。
だけど、先輩がそう言うなら、何かいいことがあるのかもしれないな、と感じた。
その日から、先輩は、俺にとって、誰よりも特別な存在になった。
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