どうして、なんだろう?


「くよくよすんな、笑っとけ!」


先輩はあの時、俺にそういってくれた。
大好きだった親友に彼女ができたときのことだった。

自暴自棄になっていた俺は、先輩に「どうしたの?」と聞かれた時、嫌われてもいいと思って、

「俺、男の人が好きなんだ。今日、ずっと、好きだった親友に女ができた」

ずっと、誰にも言えずに苦しんでいた親友への想いを口にした。
先輩は否定することなく聞いてくれた。

「しかたない」

と、先輩は言って

「男にしろ、女にしろ、誰にしろ、失恋することは、ある。が、引きずるな! いつまでも、そうやって、くよくよしていても、しかたない。お前がそうやって、悲しんでいても、彼は、お前のものになるわけじゃない。それに、そのことで、こじれたら、親友にさえ、戻れないかもしれないし。そうだな。笑っとけ! 遠藤は笑っていたほうが魅力的だと思う」

と励ましてくれた。

びっくりした。

こんな人がこの世界にいたなんて知らなかった。
俺はひたすらに自分が同性愛者であることに、後ろめたさを感じていたから。
救われた。





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