年下でごめんなさい
「どんな人なんですか?」
俺は冷静を装う。
「年上」
先輩はただ一言そう言った。
「へぇ。それはよかったですね」
「………そうだな」
「どうしたんですか? 先輩、年上の人が好きだって言ってたじゃないですか?」
「言ってけどさ…」
淋しそうに先輩はこっちを見た。
期待しそうになる自分が嫌だ。
「俺、他に好きなやつがいるんだよ」
初耳。
そして、さらに衝撃事実だった。
「え、誰ですか?」
「いい言えるわけ、ないだろ!」
「そうですね。はい。あ、やっぱり年上の方なんですか?」
「え、あぁ、う、うん。そう」
「……」
そんなに照れなくてもいいじゃないか、と思った。
同時に先輩にそんな顔をさせる年上の女が憎たらしいと思った。
「年下はめんどくさいから」
以前、年上好きを口にした時の先輩の一言だった。
「年下でごめんなさい」
俺はそうやって、謝ってみせた。
心のどこかで、かまって欲しかったからかもしれない。
だから、先輩は年下はめんどくさいとか思うのかもしれない。
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