待って下さい
今日、部室で、先輩は憂鬱そうに空を眺めていた。
鳥籠のなかの鳥のようだった。
この人でも、淋しい顔をするんだなと、俺は思った。
先輩はいつも笑ってばかりいたからだ。
「笑っていたらいいことあるって」
どんな深刻に悩んでいる奴にも、あっけらかんとして、そうアドバイスする。
先輩はそんな人だったし、自分でもそれをかたくなに信じて実行する明るい人だった。
だから、いつも、どんな時でも、笑っていたのだと思う。
「先輩。こんにちは」
俺は何と声をかけていいのかわからず、なんとなく挨拶してみた。
先輩はただ「こんにちは」とぎこちなく笑っただけだった。
「どうかされたんですか?」
ようやく、俺は本当に聞きたかったことを聞いた。
先輩は少し悩んだ顔をした後に「俺、お見合いすることにした」とつぶやいた。
「……え?」
衝撃だった。
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