さて、新しい今日をむかえよう。


=直人side=


朝がくるのが怖かった。
繰り返される日常も、壊れてしまうかもしれない日常も、俺は嫌いだった。
生きている意味なんてなくて、この世界に自分がいる必要もなくて。
俺は俺でなくてもいい気がして。
いつも、嘆いていた。
どうして俺は幸せになれないのか。

今なら、わかる。
俺は自分から、幸せを拒んでいた。
恐れていたのだ。
一度でも暖かな光に照らされ、また、この暗闇に落ちるかもしれないことを。

空っぽだった。

俺自身に意味を与えたくて、与えてほしくて、ひねくれていた。
今になって、わかる。
ただ、俺は諦めていた。降り注ぐことのないものだと。


「さて、新しい今日をむかえよう」

カーテンを開いて、背伸びをした。
この薄っぺらな世界が愛おしく感じた。
光がいつもより差し込んでいる気がしてならなかった。

もう、怖くない。
いつまでも一緒に歩んでくれると彼は言ってくれた。
日々変わっていく俺でもいいのだと言ってくれた。
それが生きていくことなんだと言ってくれた。

「馬鹿」

俺はケータイに届いたメールに呟いた。
『これからもよろしく』なんて何を今さら。
だけど、本当にうれしかった。
こんな俺とこれからも仲良くしてくれることが。
『いわれなくても』俺はそう一文で返した。
『愛してる』なんて返事が来たのを確認すると同時に、玄関のチャイムが鳴った。

孝だった。





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