君の幸福にはかえられない
=岸和田side=
久しぶりに俺はオムライスを作ってみた。
「今日の岸和田家のメインですよ」
俺はそう言って、弘樹の前にオムライスを差し出した。
「子ども扱いするんじゃないよ」
弘樹はそう言って、膨れていたが、オムライスはおいしそうに食べてくれた。
暗黙の了解というものが俺達にはあった。
なにかに落ち込んだ日にはオムライスなんだ。
必ず、俺たちはこうして、次に前向きに行こうと瞳を合わせていたんだ。
そうやって生きてきた。
だから、今回のこともそうして過去にしようとしていたのかもしれない。
「君の幸福にはかえられない」
「え?」
唐突に、弘樹がそう言ったので、俺は間抜けな返事しかできなかった。
「うん。俺、今、そんな気持ちかもしれない」
弘樹はまっすぐに俺を見つめてそう言った。
だから、俺も言ってやった。
「それは俺のセリフ」
だと。
君の幸福にはかえられない。
俺の幸せに君の涙は含まれない。
君が笑顔でいてくれたらいいのにと願う。
頼りない俺かもしれないけども、ずっと君を影から守っていたい。
大好きでした。
この恋は叶わなくていいから、どうか神様。
あの子を幸せにしてあげてください。
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