温かいお茶でもどうですか?
「顔色悪いぞ、部長さんっ」
「ぎゃっ…」
いきなり肩をつかまれて、俺は跳ね上がった。
「何もそんなに驚かんでも…」
俺はシワを寄せて笑う課長に、頭を下げる。
「申し訳ない。少し、気がたっていてな。だが、仕事中に飛び付いてくるほうもどうかと思うが…」
「それは悪かった。けど……無理すんなよ。仕事も大切だが、自分の身体はもっと大切なもんなんだぞ? 小池」
「わかっているつもりだ、神崎」
「本当か? ずっとポカーンとしてたくせに。てか、ま、いいけどね。…な、小池。お昼一緒に行こうぜ。また、美味しい店見つけたんだ」
「わかった。じゃあ、12時にまた」
「じゃね」
ぶんぶん、と手を振りながら、神崎は駆けて行く。
いちお、言っておこう。
神崎はあんなノリだが、俺と同じ年齢だ。
同期だ。
いい加減、落ち着いてもいいはずなんだが、あの底無しの明るさに何度か救われてしまった俺は、
歳相応の喋り方をしろ、
とは言えずにいる。
ま、あれはあれでいいのかもしれない。
俺が堅物で、あいつがムードメイカーで。
てか、今更、神崎が渋くなったら、なったで気味が悪いだろうし。
「…楽しそうですね」
「え?」
うわっ、素で振り返ってしまった。
早くいつも通りの仏頂面をとらなくては。
……いや、いっか。
「昨日は、本当にすみませんでした。無理矢理あんな…」
「お前な、今、仕事中なんだから、そういった話は後にしなさい」
正直、今されたら困る。
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