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「な、簡単だったろ?」
校門の影に隠れていた、岸和田さんはにっこりと笑った。
俺は、この時ばかりは、頼りない人だというイメージを忘れた。
この人は、案外、強いと確信した。
「ああ」
簡単だったよ。
と、俺は笑って見せたが、足はがくがくしていた。
ちょっとだけ怖かった。
「さて、行きましょうか?」
そう言うと、岸和田さんはとことこ歩きだした。
俺はなおも、この人は変わった人だと、
つかめない人だと、
考えた。
直人に似ているかもしれない。
だから、直人は、岸和田さんと居ても、孤独は埋まらなかったのかもしれない。
悪い話ではなく、正直、少しうらやましい。
二人で一つ、そんな感覚なんだと思う。
居て、あたり前の存在なんだと思った。
俺は、岸和田さんのようにはなれないと、思った。
だけど、俺は俺だから、出来ることを
探していこうとも、思った。
時間なんて、これから、いくらでもあるんだから。
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