=次郎side=


俺はいらない子供だった。

どんなに頑張ってもいらない子供だった。

そんな俺がある日、おもちゃを手に入れてしまった。


30歳にして、身体の弱いことで評判の事務の女と恋に落ち、結婚した。
その女には子供が一人いた。
直人という名前の、男の子だった。

俺に似ている可哀そうなガキだった。
いつも、どこか遠くを見ていて、自虐的なことを考えているガキだった。

「生きるって何?」

昔、直人が呟いたことだ。
今もずっと忘れられない。

だけど、そんな悲しいこと、直人には忘れてほしかった。
どんな手段でもいいと思った。
非道だと言われようと、俺が憎まれようと、直人がそんな悲痛な思いから、
少しでも、遠ざかればいいと思って、
なのに、なのに、



「ごめんな」

俺は泣きやまない直人に謝った。
許されないことをしていたのにも関わらず。

「嫌だったよな」

それでもいいと思っていた。
たとえ、直人が俺のことを嫌な奴だと思ってくれても、
まだ、その矛先が自分に向かないことが何よりも、
いいと、思った。

でも、違う。

「お、じさん、俺、もう、耐えられない」

ごめんなさい、と直人は言った。

「違う、お前は何も、悪くないっ」

悪いのは俺だ。
押しつけがましいことして、傷つけて、結果、何も変わっていない。
より、深く君を傷つけただけかも知れない。

「終わりにしようか」

「…っ」

「違う、そうじゃない。この関係をやめるだけだ。ちゃんと、家にはお金を入れるし、直人の大切なママを傷つけたりしない。約束する」

「なんで」

どうして、そんなことを急に言うんだ。そんな目をして、直人は俺を見つめた。

「あえていうなら、罪滅ぼし」


君にたいしての…





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