5
放課後、俺は直人を見送った後、呼び出しておいた一年坊主に会うために、体育館裏に足を運んだ。
「なんだよ、話って?」
相変わらずの態度に、俺は少し笑った。
「悪い悪い。えっと、ずっと、聞きたかったんだけど、直人のこと本気で好き?」
「本気っていわれるとあれだけど、見ての通りだ」
普通に好きだよ、と一年坊主は俺を見上げた。
「岸和田には、わからないかもしれないけど、俺、本気なんだよ」
「そうだな、俺にはわからない。なんて言っても、俺も本気なんだ」
「え!?」
「……気づいて、なかった?」
俺は予想だにもしなかった、反応に戸惑う。
「ままさか。え? マジで!?」
「うん。そうなんだけど」
「……うわぁ」
何をそこまで驚かれなくてはいけないのかと思った。
「岸和田さん。大変だね」
一年坊主はどうしてか、哀れむかのように、俺を見つめた。
「なんで、いまさら、さん、なんてつけるんだよ。落ち着かない」
「いや、だって、なんか、哀れで」
「何が…」
「大好きな彼は親友です。なんて、淋しいじゃん」
一年坊主は、本当に同情しているかのように、瞳をウルウルさせていた。
「いや、そんなことに同情はいらないんだ」
「じゃあ、どうして、そんな話を俺にしたんだ?」
「実は…」
お前に知っていてほしいことがあるのだと、俺は話し始めた。
[*前] | [次#]
目次に戻る→