=弘樹side=


俺は生まれついて、男が好きだった。

だけど、それが普通じゃないって、知らなかった。

みんなもそうなんだと思っていた。

だから、びっくりした。

男が集まって好きな女の子の話をしたあの時は。

もうほんとに驚いた。




「だから、それでって、聞いてる?」

「え?」

俺はふと我にかえった。

「悪い。なんか心がタイムトラベルしていた」

「弘樹は何をそんなに気にしてんの?」

「はい?」

俺は唐突の孝の問いにすっとんきょんな声をあげた。

「いや、深い意味はなくてさ、なんか、黙々と考えてたみたいだからさ」

孝は心配そうに俺を見つめた。

「…なんか、あったら、いつでも言えよ?」

聞くからさ、と孝は言った。

「馬鹿、お前に頼んなくても俺は平気なの!」

でも、ありがとう、と心の中でだけ返しておいた。


別に孝を疑っているわけじゃない。
だけど、怖くてしかたなかった。


「な、孝は直人先輩のこと本気で好きなの?」

卑怯だと思った。
孝がここで同性愛を否定しないなら、俺は自分が同性愛者だと伝えようと決めた。

「本気って、本気じゃなきゃ、ここまで追いかけないし」





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