先輩の親友の視線
「直人先輩〜っ」
あれから一夜明け、次の日の朝、俺はストーカーを卒業した。
まだ、心の整理がつかない直人をよそに、俺は、なんだろうか、幸せでしかたなかった。
「朝から、うるさいんだよ…」
眠そうに、直人はぼやいた。
やっぱ、幸せだ。
こうして、直人の前にいられるなんて。
「感動してんだよ?」
直人が俺を見てくれている。
俺の言葉に返事をくれる。
嬉しい。
嬉しいんだ。
だって、俺は知っているから。
これが当り前ではないのだと。
昼休み。
俺は弘樹と食堂にきていた。
弘樹は
「ストーカーを卒業してくれて嬉しいよ」
なんて、しみじみと口にした。
「ひどいな、ストーカーじゃないのにな」
俺は少しふてくされてみた。すると、弘樹は意外そうに「何、その優しい話し方?」と不機嫌になった。
どうしてなのかはわからない。
「え、そうか、変か?」
「いや、そういうわけじゃなくて、なんか、気に食わない。孝、俺に報告することあるだろ?」
「あ、忘れていた」
「ほらほら、親友に隠しごとなんていけないんだからさ」
早く早くとせかす弘樹に俺は笑ってみせた。
ホントに幸せだったんだ。
何にも、わかんなくなるくらいに。
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