悪気はなくて作為はあったんです




=上司side=


「好きです」「愛しています」「大好きです」

頭に響いて離れない声だ。
どうしてかは知らんが、俺の部下の一人がそうやって笑いかけてくる。
まるで、昔飼っていたダックスフントのポチタみたいで…
無償に頭をなぜたくなる。
だがな、それは失礼なことだ。
一人前の男に対して抱く感情ではない。

…はぁ、どうしたものか。

天国のポチタ。
俺、部下が可愛くてしかたない。

そうだ。仕方なかった。

なのに、どうしてと聞きたい。

今日忙しくて、今やっと仕事が片付いて、誰もいないから、おもいっきりデスクにもたれた時、

「部長?」

て、声がした。
やばい。上司のプライドが。

「な、何?」

慌てた俺は普段の作り声ではなく、素の声で振り返ってしまった。
やべっ。

ずっと、部長っぽく振る舞っていたのにだ。

ここにきて、数年の苦労が剥がれた気がした。

どうしよう。
さっきのデスクにもたれつくの、
今の幼めな声も、
見られたし、聞かれたよな。





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テーマ「人外ファンタジー」
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