抱き寄せられた後輩からはねぎの香りが



「はっきり、言って、ヤダな。めんどくさいし」

孝は俺の手を握りこんだ。
言ってることと、していることがあっていない。

「いやなら、放せよ。見舞いなんて来なければいいだろ? 俺なんかを好きでいるの、やめたらいいだろ?」

そしたら、もう、求めなくて済むんだ。
振り返らなくていいんだ。
不安も、孤独も、忘れたままでいい。

何も知らないままに戻れれば、傷つくことも、ない。
こんなの間違っている。

俺は、孝を信用していない。
いや、信用しないように、必死で抵抗しているんだ。

「嫌いになるだろ、俺、孝のことよりも、自分のことで、精一杯で」

だってさ、自分でも嫌になるくらい、自己中で、
いつまでも、あの日から、抜け出せずにいるんだ。

孝のこと、ちゃんと見てあげれていない。

俺は、孝に好かれる権利なんてない。




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