不意に流れた涙
=直人side=
「俺、直人が好きだよ」
本当に? とは、聞けなった。
本当に、孝はそう言ってくれたのだと、思えた。
「……たか、し、ごめん、俺、ほんと、試すようなことして」
信じるのが怖かった。
不意に流れた涙を、君は気づいてくれていたんだと思えたことで、すごく救われていた。だけど、どうしようもないくらいに、孝に惹かれていくのが、怖かった。
俺のこと好きだと言ってくれた、あの人のように、
孝も俺のこと、決めつけてしまっているんじゃないかって。
疑ってた。
突き飛ばして、逃げた。
自分が傷つくかもって、怖かったんだ。
なのに、俺はいつも、後ろにいる君に安堵していた。
なのに、俺はいつも、孝も離れていくんだと思っていた。
好きだったのに…。
嫌われてもしかたないことしたのに。
俺、その手をとってもいいの?
「孝、本当に、俺なんかのこと、好きでいいの?」
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