何があろうと先輩は先輩ですから




「何があろうと先輩は先輩ですから」

俺は直人を見つめながら、そう言った。

「直人先輩が何をそこまで怖がっているのかなんて、俺にはわかりません。言ってくれないと、わからないです。俺、馬鹿だから、どんなに先輩のこと見てきても、先輩のことわからなかった。好きになるだけで、嫌いになれなかった。本当は、迷惑だって思う。俺みたいな、男から、好意を寄せられたって…。だから、はじめは、直人先輩に突き放された時、俺は、もう、駄目かなって、考えもした。だけど、諦めきれなかった。あなたは、俺に何かを見つけようとしているようにしか、見えなかった。突き放して、背中向けて、でも、直人先輩は、俺のこと、何回も振り返ってくれた。まるで、子供みたいに」

「……孝?」

「俺を確かめているようだった。どこまでも、俺があなたの世界から離れないことを、試しているようにさえ、見えた」

俺は一息つくと話続ける。

「たしかに、はじめは軽い気持ちで、好きだと言いました。でも、だんだん深みにはまるように、本当に先輩のこと、好きになりました。俺は」

パズルが好きだった。
完成するまでの、あのドキドキ感。
過去に何度も完成させては、放り投げた。
次のものに目移りした。

完成してしまったものには、もう求めるものなんてないからだ。

俺は空っぽだった。
俺は何もわかってはいなかった。
勝手に決め付けていたんだ。

人はかわっていくものだと知らなかった。

あなたに恋をして、はじめて気付いた。

俺は変わってしまった。

「あなたのことを全て知るなんて、出来ません。そして、直人先輩も俺のことなんて、理解できないはずだ。話して下さい。じゃないと、わかりません。もう、勝手な解釈で、誰かのことを決めつけたくない。とくに、直人先輩のことだけは、そんな風に終わらせたくない」

振り返っていいよ。俺はいつだって、あなたを想っているだろうから。
安心して。前向いて、歩いてくれていいんだよ。

「俺、直人が好きだよ」





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