ね、どうして?
=孝side=
「俺のために死んで」
直人はまた呟いた。
瞳は真剣で。
悲しそうだった。
「嫌です」
俺はそう答える。
直人のほしがっている答えは、
すでにわかってる。
だけど「どうして?」と俺は尋ねる。
「どうして? 直人先輩は、どうして、そんな問い掛けをするんですか?」
ただ、今、わからないことは、
直人がそこまで、この問い掛けに執着する理由だ。
確かに直人は人を遠ざけたり、している。
だけど、どうしても結びつかない。
期待していない世界に、言葉はなんて、いらない。
必要以上に傷つくわけが、ない。
「直人先輩は、何がそんなに怖いの?」
わからない。
だから、知りたいと願う。
どうして?
俺はこんなやっかいな奴が好きなんだろ。
なんで、恋してるんだろ。
ねぎ片手にお見舞いなんかしてるんだろ。
どうして?
どうして、こんなにも優しい気持ちになるんだろ。
ほっとけばいいのに。
守りたいだ、なんて。
馬鹿だ。馬鹿。
だけど、
愛しくてしかたなかった。
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