3
「知りたい?」
一年坊主は確かめるように呟いた。
なんだか苛立つ。
「知りたいから、聞いてんだよっ!」
「だったら、直人本人に聞きな!」
一年坊主はキッパリとそう言った。
「……それができたら、苦労しない」
俺は弁解する。
だってそうだろ?
直人本人に聞けないから、こうしてお前なんかに聞いているんだし。
「違うだろ?」
なのに、一年坊主は言いやがる。
「直接、本人から聞き出そうという努力をしてないくせに、そんな口をきくな! てか、岸和田は傷つきたくないだけだろ!? いい人のままでいたいだけだろ? 根性なしっ!」
………ぐさり。と、くる。
全く、そのとおり。
「失いたくないんだ。お前みたいに、俺はなれない」
気持ちを押し殺してでも、君のとなりにいたい。
これはただの我が儘だ。
「だったら、聞くな。親友が聞く話じゃないだろうしね」
一年坊主はそう言って、
「じゃあ、自分で早退の理由、直人に聞いてみるわ」
などと手を振りながら、人ごみに消えて行った。
俺は一人、廊下に突っ立っていた。
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