「知りたい?」

一年坊主は確かめるように呟いた。
なんだか苛立つ。

「知りたいから、聞いてんだよっ!」

「だったら、直人本人に聞きな!」

一年坊主はキッパリとそう言った。

「……それができたら、苦労しない」

俺は弁解する。
だってそうだろ?
直人本人に聞けないから、こうしてお前なんかに聞いているんだし。

「違うだろ?」

なのに、一年坊主は言いやがる。

「直接、本人から聞き出そうという努力をしてないくせに、そんな口をきくな! てか、岸和田は傷つきたくないだけだろ!? いい人のままでいたいだけだろ? 根性なしっ!」

………ぐさり。と、くる。
全く、そのとおり。

「失いたくないんだ。お前みたいに、俺はなれない」

気持ちを押し殺してでも、君のとなりにいたい。
これはただの我が儘だ。

「だったら、聞くな。親友が聞く話じゃないだろうしね」

一年坊主はそう言って、

「じゃあ、自分で早退の理由、直人に聞いてみるわ」

などと手を振りながら、人ごみに消えて行った。


俺は一人、廊下に突っ立っていた。





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