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直人は早退した。
家まで送るよ、という俺の親切を押しのけて。
「……はぁ」
なんか、つまんないな。
授業もろくに頭にはいらないし。
直人のことばかり考えているし。
何かあったんだ。絶対。
なんだかんだで下校時刻になっていた。
ぞろぞろと下足室に流れていくクラスメイト波のなかで俺は叫んだ。
「くっそー。考えてもわかんねーよっ!」
頭を抱えながら、自問自答してみる。
が、答えは見つからない。
くそ〜、
とりあえず悩んでみる。
もしかしたら、何かひらめくかもしれない。
だが、「馬鹿だろ? あんた」と俺の苦労を踏みねじる声が耳にはいる。
「…その声は、えと、あ、ストーカーの一年生」
「岸和田さん。ここでそんなボケかまされても困るわ。てか、何、その覚えかた。頭悪いなぁ」
「んだと、このストーカーの一年生!」
…………名前、思い出せない。
俺、歳かな?
「ま、好きなように呼べよ。てかさ、直人、早退したけど、何かあったわけ?」
「はぁ? お前、ストーカーなのに知らないの?」
「ストーカーじゃない。わかるだろ? あんたなら」
「うっ…」
わかりますとも。
わかりますとも。
あの頑なな言葉に立ち向かっているだけで、ストーカーとかじゃないことは。
ただ、世間一般からしたら、立派なストーカーなわけで。
「わかってんなら、いい。てか、俺、今日は遅刻してさ、さっき来たの。そしたら、直人帰ったみたいだし、大丈夫かなって」
「……そう」
「なんだよ。その淡泊すぎる返事は?」
「いや、ちと考え事してて…」
そうだ。今、優先すべきは直人のことだ。
こんな奴に構っているひまなんてない。
いや、待て。こいつ直人のこと付け回しているよな?
「お前何か知らないか? 今日、直人おかしかったんだよ!」
「え、ぁあ」
「何、勝手に納得してんだよ!」
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