俺の取りえはみたくれの良さだけ
=直人side=
悪魔…。
そう言われることにも慣れていた。
あれは、中学生の時だ。
話したこともない奴から何度も告白されて、うんざりしていた時期だ。
俺は「好きです」の言葉に、こう返すようにしていた。
『だったら、俺のために死んで…』
真剣に口にした。
だけど、誰もわかってくれなかった。
俺なりの問い掛けだった。
噂は噂を呼んだ。
いつの間にやら、俺はそうして、人殺しをしたのだと言われるようになった。
安心した。
それからと、いうもの誰も俺に近づいてくることはなくなった。
すがすがしいとさえ、感じた。
自由だった。
誰にも感心をしめされないことが。
安心した。
孤独は、孤独を打ち消してくれるから。
そうだ。一人が当たり前になれば、淋しくない。
不安になることもない。
怖くない。
誰も傷つけず、
誰からも傷つけられず、
生きていけるから。
『直人先輩〜』
俺は、もう、誰かを好きになんてならない。
俺は、もう、恋なんてしない。
[*前] | [次#]
目次に戻る→