可愛い顔してキツイこというね
=弘樹side=
今日、食堂に行く孝の横を歩いた。
いや正しくは、今日も。である。
そうだ『も』なのだ。
「なんか、収穫あったの? ストーカーして」
俺は冷たく投げかけた。
「違う。弘樹。これは人生リサーチだ」
「…そ」
「馬鹿にするなよな。こうして今は離れているけどな、これは試練なんだ」
「そう」
いつまで続けるんだろう。
ま、俺はいっこうに構わないが、これじゃ、孝は次の恋もできないではないか。
………あ、あれれれ?
「孝。いまさら、質問。いい?」
「え、あ、くだんねーこと言うなよ?」
いや、くだんなくないよ!
と、心で叫んで、俺は孝を微かに見つめた。
「お前、あいつ、男だぞ?」
「で、何?」
「孝って、気にしないの?」
「は、何を?」
「ほらなんて言うか同性愛? じゃん」
「ああ、言われたらそうだな」
……気にしてないんだ。
俺、あまりそういったことに偏見ないから、見逃していたわ。
それに、三年生の悪魔は極上に可愛いし。
可愛いし。
何て言うの?
あの強がりなところとか、キュンってくるよな。
特にあれだ。
夢見がちロールなんてものを、ほおばる時の幸せそうな面。
やばいよな。あれは。
……わかる気がする。
孝には悪いけど、わかる気がする。
どうして直人先輩が一部の男子から『悪魔』呼ばわりされているのか。
そして、どうして直人先輩はこんなにも逃げているのか。
ようやく、わかった気がする。
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