風景だと思えばいいよ
「岸和田」
「ななっ何？」
いきなり名前を呼ばれて、驚いた。
「風景だと思えばいいよ」
「……？」
なんのことか、さっぱりだ。
俺は首をかしげた。
「だから、あれ、風景だと思えばいいから」
そう言って直人は一年坊主をちらりと見た。
「巻き込んで、ごめん。悪いと思う。けど、あいつも俺なんて嫌いになるから、もうじき、やめると思うし、深く考えず、風景だと思えばいいから」
「ふう、けい…」
苦しい。くるしいよ。
俺も、いつか君にとって風景になるのだろうか？
なるだろう。
この恋愛は、君を好きになった時点で終わっている。
君はざっくりと切り捨てるから。
……どうしてそんなに怖がるの？
「な、直人。お前は何がそんなに気に入らないんだ？」
……まるで誰かに好かれることが、信じられないようなこと言って。
「別にさ、俺が割って入ることじゃないけどさ、どうしてそんなにあからさまに」
……嫌いになるなんて。
「言えるんだよ…。自信持てよ」
「は？」
「だから、直人。嫌いになるとか、飽きるとか言うなよ。俺、何も知らないけど、好きだよ。直人のこと。何があっても好きだよ」
[＊前] | [次＃]
目次に戻る→