軽く見ないで下さい!
=孝side=
「嫌いになりませんよ、絶対」
俺は素に近い声で告げる。
「軽く見ないで下さい!」
……そう言ったら、先輩は泣き出して、走り去った。
俺はその背中を追いかけることができず、胸を痛めた。
わかっているつもりだ。
先輩が何かを必死に隠しているのは。
負い目を感じているのは。
俺はわかっていたつもりだ。
だけど、俺はちっとも直人のことを知らない。
軽く見ないで下さい!
そんな言葉が虚しい。
俺はそこまで言わないと
わかってもらえないことが……。
先輩だって俺のこと、
ちっとも知らないんだ。
出会って1ヶ月。
知り合いになって10日。
名前を呼んでもらえるようになって1日。
俺は何を見てきたんだろう。
俺は、直人の何を、好きだと思っていたんだろう。
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