本格的に知り合いになりました



「直人先輩。おはようございます。今日も元気に一日過ごしましょう!」

「…………あ、そだな」

あれから、毎日、告白男子は俺の前に現れた。

はじめは完全無視を心にちかっていたが、あまりの効果のなさに、馬鹿らしくなってやめた。

と、いっても、あんな返事しかしない。
なのに、この告白男子ときたら、楽しそうに「今日は晴れてますね」とか、「今日は早いですね」とか、「朝、何食べたんですか?」とかとかとか……毎朝、俺ん家の前まできて、毎朝、一緒に登校して、そんなことを聞いてくる。


……俺の平凡な毎日が崩れた。

ま、別にどうでもいいんだけど。

「先輩、これからもずっと好きです」

急に告白男子は俺をじっと見つめて笑う。
どうしていいのか、わからない。

「だ、な、お前、真顔でなんてことを」

言うなよ。わからなくなるから。


「照れないで下さいよ〜」

「照れてないし」

「じゃあ、どうして顔、そんなに赤いんですか?」

「え?」

俺は慌てて顔を隠した。

赤くなってたのか?

「やめて下さい。まじ、そんなかわいいことしたら駄目ですよ。直人先輩」

「は?」

「もしも、そんな顔みたら、男子なんていちころですよ!」

……………………リピートお願いします。
告白男子。今、さ、なんと?

男子なんていちころですよ!

って?
ああー、なんだ聞き間違いだな。
きっと。そうだ。
そうに違いない。

団子っていったんだ。きっと。

「みたらし団子か…いいなぁ」

「みたらし団子ですか?」

「うん。あのトロトロがいいよなぁ」

「直人先輩って、甘党ですよね。本当」

「うん。甘いの好きだな」

「……じゃ今度、オススメの団子屋さんにご招待します」

「え? いいの? まじで?」

「はい」

「やったぁ」

「あ、もうこんなところまで来ましたね」

「あ、本当だ…」

みたらし団子に気をとられていた俺は自分の教室の前に来ていることにも、気付かずにいた。

「それでは、直人先輩、またです」

「またな」

俺は手を振った。
すると、告白男子は今にも泣きそうな顔をして

「愛してま〜す」

などと叫びながら、一年生の教室へ向かっていった。

「愛してますって…」
俺は繰り返した。


はぁ……
なんだろうな。あいつ。


……………あ、しまった。

会話してしまった。
今度、会う約束まで…。

しかも「またな」だなんて手を振ってしまった。

ま、いっか。

その日、俺達は本格的に知り合いになりました。





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