泣きたくなった。
泣いてばかりいると俺は嫌になった。

毎日、楽しく過ごしたいのに。
どうしてこうも、辛くならなくてはいけないんだ。


俺はケイの手を強く握った。
すると、思いっ切り、俺の手がひかれて、ケイの腕の中に落ちた。

「本当に?」

ケイはそう言った。

「お、お前、起きて、なんで?」



俺は完ぺきに動揺していた。
動揺するほかに、することなんてないってくらいに、動揺していた。


「俺も、直太郎が好きだよ」


「は?」


俺は呆けた。


「何、その反応は」

ケイは不満そうに言った。
だから、俺は、お前は俺のからだが目当てなんじゃないのか、と聞いた。

だって、そうだろ?


なのに、ケイは「直太郎だから」と呟いた。

「だって、言ってくれないんだもん。態度見ていて、直太郎は俺のことが好きなのはわかったけど、でもそれって確信持っていいものじゃない。直太郎から、聞いたわけじゃない。だから、答えがほしかった。俺のこと嫌いなら、突き放してくれるかなって、思って」


でも、とケイは言う。

「嫌うとかそんなんじゃなくて、直太郎は」

何もなかったようんに、俺に接してきた。
だから、不安になった。
直太郎は俺のことをどうも思っていないのかと。

ケイはそう言って笑う。
その顔がとても格好悪かった。

「関心ないのかなって、思って、つい」


ケイは落ち込んだように、うつむいた。

俺は、なんだよ、と心の中で呟いた。


「わかりにくいんだよ。だいたい、俺も」

不安だったんだぞ、と言った。
好きだから、離れていかなかった、と言った。

好きなんだと、もう一回、言ってやった。



馬鹿らしい。と、二人で笑った。





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