「いや、同居だから」


俺はこの期に及んでも、同居という。
いや、他に何も当てはまることなんてない。
丹羽や千香が少しおかしいだけだ。

でも…、俺はそういうことが言えたらいいのに、と思う。

恋人っていう証が欲しい。


そういえば、俺、別にケイと付き合ってるとかそんなんじゃないんだよな。
体だけの関係なのかもしれない。


「ああ、同居だ」

悲しい。なんで、こんなにも俺はダメになってしまったんだ。


「課長はケイのこと好きですか?」

「なんで、お前がそんなこと聞くんだよ!?」

茶化して言った。
でも俺は動揺していた。


「俺、ケイとは高校の時からの友達なんです」

「え、まさか、あんなわがままちゃんと?」

「わがままっていうか、あれは照れ隠しですよ」

丹羽は優しい顔をした。
小池に向けるそれとはまた違う、友達を想うような顔をした。

「幸せが何か考えて見て下さい」

丹羽はそう言うと、すんだ空に顔をあげた。
黒髪が綺麗になびいていた。





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