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=神崎side=
素直になることってなんですか?
それって、大切なことですか?
本音を伝えたら、必ず報われますか?
傷つきませんか?
真剣になったら負けですか?
俺は、丹羽を見送った後、一人、屋上で考えていた。
それは俺がガキの時、
まだ人間の裏表に気づいていない時、
人間の残酷さを知らない時、
努力は必ず報われるって疑わなかったあの時、
いつまでも無知でいられないことを知ったあの時、
俺は、知らない間に傷を負っていた。
必ず、なんてものはこの世にないんだと知らされた。
素直に自分のことを伝えても、受けとめてもらえないことに気がついた。
真剣になっても馬鹿らしいと知らされた。
俺は徐々に、自分が嫌っていた、怖がっていた大人になっていった。
だって、そっちの方が楽だった。
余計なことしなければ、傷つかない。
俺は俺自身の身を守れれば、それでいい。
小池に恋をしても、伝えなかったのは、心のどこかで、わかっていたんだ。
君は俺には振り向かない。
だから、その淋しさを紛らわすために、誰とでも寝たんだ。
相手も本気じゃない。
俺と一緒だ。
ただ淋しさを紛らわしたいだけなんだ。
だから、余計に、淋しさは、膨らんだのかもしれない。
勢いにのって、小池に告白してみても、すぐに冗談でかたづけることができたのは、
それ以上、傷つきたくなかったから、かもしれない。
俺は、いつからか、本音で話すことは少なくなってきていた。
そもそも本音ってなんだろうね、ってくらいに、俺は、もう自分自身のこともわからない。
わからない。
どうして、俺はこんなにもさびしがり屋なんだろう。
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