自分からまずはじめよう
=丹羽side=
弁当なんて、軽い気持ちでした。
部長、最近、どこか、悩んでいるみたいだったので、何か、俺にもできたらなって、少しは考えたんです。
神崎課長から、お昼休みの部長を奪おう作戦は、そのついでです。
本当は、もっと、ゆっくりと、いろいろ話してみたかったんです。
いつも、二人っきりになっても、俺、部長のこと求めてばかりいるので、
そう、たまには、ほのぼのと、のんびりと、二人の時間ってのをつくってみたかったんです。
たぶん、いくら、俺でも、昼休みなら、さかったりはしないでしょうし。
それに、いつも俺はもらってばかりなので、俺からも何か部長にしてあげたかったんです。
でも、勘違いをさせてしまっていたのなら、それは俺の考え不足でしょう。
俺がもっと、ちゃんとしていたら、部長は、あんな顔しなくてよかったはずなんです。
「部長!」
俺はお昼休みのオフィスに駆け込みました。
必死過ぎて、何も考えずに叫んでしまったことに反省しつつ、
部長しかそこにいなかったのを確認すると、入口のドアをしっかりと閉めました。
「あの、今朝のことなんですけど」
声が震えてました。
俺って、こんなにも心臓弱かったでしょうか?
めちゃくちゃに痛いです。
部長は俺の方をぼんやりと見つめて、
悲しそうに、笑いました。
まるで、もう、いいんだよ、と言っているようにも見えました。
でも、違うんです。
「俺、部長のことが好きです。本当に、好きです。これからも、かわりません」
俺はドアを背中で抑えながら、遠くのディスクの後ろにいる部長にいいました。
とても格好のいいものではないと自分自身わかっています。
でも、他にどうしたらいいのかなんて、俺にはわかりませんでした。
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