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=ケイside=
なんだって、そんなにも嬉しそうなんだろう。
前も、侑には可愛い笑顔向けていたし、
実際に侑は可愛いけどさ、
俺なんかと違って、
けどさ、
「直太郎。直太郎は、俺のこと嫌い?」
「え。は、え?」
「…この前はごめん。反省はしている。だけど、後悔はしていない」
「べ、べつに、俺そんなことは気にしてないし、平気」
この前とはこの前のことだ。
無理矢理に直太郎を押し倒したあの日のこと。
「…何、思い出してんの?」
「うっさい、俺がまだ健康だっていう証だ、これは!」
直太郎は、真っ赤になって、右手を振りおろした。
なんか、耐えている顔がたまらない。
「トイレに」
「行かなくても俺がしてあげようか?」
「何を言ってんのかな? ケイくん。もう、あまりそんなこと言っちゃ、め、だぞ?」
「直太郎って自覚ないの?」
俺はできる限り冷めた目をして、そう言った。
すると、直太郎は自覚ならあると言った。
「あるよ。さっきのは小池のくせその2が移っただけだし。俺がしても、きもいことは自分で知ってんだよ。ただ、これ、なかなか治らないんだよ…」
直太郎は両手をついて、落胆した。
だけど。
はっきりいうと、直太郎って見方によったら可愛い生き物だと思うんだ。
俺は。
だから、無意識だとしても、そんなことしないでほしい。
てか、もう、駄目だ。
「ちょ、ケイ?」
以下、暗転。
そういうことにしておいてもらおう。
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