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その日、小池はずっと落ち込んでいた。
丹羽はそんなことにも気付かずに、仕事が終わるとどこかへ、駈け出していった。
俺は、丹羽に対して、殺気をおぼえた。
恋愛感情はもうないにしても、小池は俺にとって大切な人だった。
たとえ、丹羽でも、傷つけていい存在じゃない。
俺は携帯をだすと、丹羽のアドレスを開いて、一言「馬鹿」とメールを送った。
そして、再起不能になりつつある小池に笑顔を向けながら、自宅まで送った。
ほっといたら、事故りそうで怖かったんだ。
「ごめんね」
小池はそう言うと、申し訳なさそうに、笑った。
笑ってくれた。
「元気だせよ? 俺、いつでも相談のるし」
ありきたりなことしか言えない自分が嫌だ。
もっと、気の利いた事とか言えたらいいのに。
だけど、俺がそんな自己嫌悪に陥っていたら、
「心配してくれてありがとう」
と、小池は俺を見上げた。
やっぱり小池は可愛いと思う。
なのに、丹羽は何をしているんだよ。
俺は丹羽に腹をたてながら、
小池には笑顔で何も知らないふりを続け、手を振った。
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