押し当たられた唇に、俺は何をどうしたらいいのか、わからなくなって、
どこの純情乙女だよってくらいに、ただ、ケイのそれを受けとめていた。

「…ぅん」

息苦しい。

いつまで、しているつもりなんだ。
俺はケイを振り払おうと手をあげたら、つかまれてしまった。

「ん、ぅんっ」

窒息死する。
俺は足をばたつかせた。
それ以外に抵抗する方法が浮かばない。


「…っぷわ」

ようやく離してもらえた唇で、俺は酸素を吸った。
必死だった。


「もしかして、直太郎、キスしたことない?」

「うっさい!」


キスだけはしてないし。
本当に好きな奴とだけしたいとか、夢見ていたんだよ。
俺。

特別なことなんだと思うし。

そういうのって。


いや、好きでもないやつを抱いていた時点で、間違っていたのかもしれないけどさ。





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