8
押し当たられた唇に、俺は何をどうしたらいいのか、わからなくなって、
どこの純情乙女だよってくらいに、ただ、ケイのそれを受けとめていた。
「…ぅん」
息苦しい。
いつまで、しているつもりなんだ。
俺はケイを振り払おうと手をあげたら、つかまれてしまった。
「ん、ぅんっ」
窒息死する。
俺は足をばたつかせた。
それ以外に抵抗する方法が浮かばない。
「…っぷわ」
ようやく離してもらえた唇で、俺は酸素を吸った。
必死だった。
「もしかして、直太郎、キスしたことない?」
「うっさい!」
キスだけはしてないし。
本当に好きな奴とだけしたいとか、夢見ていたんだよ。
俺。
特別なことなんだと思うし。
そういうのって。
いや、好きでもないやつを抱いていた時点で、間違っていたのかもしれないけどさ。
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