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「え、ああ…」
俺はどもった。
どう答えたらいいのかわからなかった。
まだ、小池のこと好きなんだ。
少し前ならそう答えていたに違いないのだが、
なぜだろう。
今はそんなにも、あの頃のように執着心はなくて。
落ち着いている。
他の誰かにさえ、走らないあたり、どうしてしまったんだろう。
俺。
自分のことなのに、わからなくなって、俺は黙り込んだ。
何なんだよ。
この感情は…
「知ってるし、馬鹿」
「え? 何を?」
俺は問いかけた。
ちょ、ちょ、近いって。
「ケイ?」
真剣な顔をして、ケイは俺に近づいてくる。
俺は、玄関のドアに、背中を押し当て、これ以上は後ろに下がれないことを知った。
え、ちょ。
ケイ?
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