「大変だね?」

「はい?」

「人のこと調べてばかりで、自分のこと調べられているの気付かなかった?」

「え?」

「俺に、わかないことは同居人と天然さんだけなんだよ。ま、女装趣味もわからないけどね」

「神崎課長、何を言ってるんですか?」

「演技が胡散臭いって言ったんだけどね」

「…いつから知っていたんですか?」

急にしおらしくなった奴を見て、俺は楽しくなってきた。

「認めるんですか?」

わざと敬語とかつかってみる。


「話し方真似しないでください」


女性社員は、いや、神崎千香は真剣な顔をして俺を見つめた。
やっぱ、人を脅すのは楽しい。
翻弄されるよりも、翻弄したい。
俺はケイに振り回されすぎて、なんだか、久りぶりの感覚に酔いしれてしまいそうだった。

「千香くんは、もともと可愛い顔をしていたもんね。大丈夫だよ。誰も気づかないと思うし。会長の趣味にも、俺、偏見ないし。元秘書がね、なんて、思ってもないし」

「思ってんだろ?」

「うわー、猫かぶりやめてしまうのかい?」

「この状況でかぶって何になるわけ?」

「おっしゃるとおりです」





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