侑くんが帰って、少ししてからのことになる。

ケイはぶっきらぼうに俺の頭をたたいた。

「ありがとう」


そう言って、また、俺の頭をたたいた。

何がしたいのか、わからない。


「かわることを怯えたらいけないんだよ。直太郎」

にっこりとケイは笑った。

本当に、何がしたいのか、わからない。


「いつも、ありがとう」


「はい?」

俺はすっとんきょんな声をだした。
何で急にそんなことを言われないといけないのか、わからない。

本当に、わからないことだらけだ。


「わかんねーよ」

俺はお前が何を言いたいのか、したいのか、わからない。

そうも言ってやった。
すると、ケイは、わかんなくていいんだ。
と、笑った。


そして、一言。


「好きだよ」


と、言いやがった。





迂闊にも心に響いた。


傷心中に優しくするとは卑怯だ。

だから、俺は、そっけなく「ああそうかい」と言っておいた。





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