3
侑くんが帰って、少ししてからのことになる。
ケイはぶっきらぼうに俺の頭をたたいた。
「ありがとう」
そう言って、また、俺の頭をたたいた。
何がしたいのか、わからない。
「かわることを怯えたらいけないんだよ。直太郎」
にっこりとケイは笑った。
本当に、何がしたいのか、わからない。
「いつも、ありがとう」
「はい?」
俺はすっとんきょんな声をだした。
何で急にそんなことを言われないといけないのか、わからない。
本当に、わからないことだらけだ。
「わかんねーよ」
俺はお前が何を言いたいのか、したいのか、わからない。
そうも言ってやった。
すると、ケイは、わかんなくていいんだ。
と、笑った。
そして、一言。
「好きだよ」
と、言いやがった。
迂闊にも心に響いた。
傷心中に優しくするとは卑怯だ。
だから、俺は、そっけなく「ああそうかい」と言っておいた。
[*前] | [次#]
目次に戻る→