それから、俺は侑くんとどうでもいい話をしながら、ケイくんの帰りを待っていた。

「楽しそうだな」

雑談していた俺たちの後ろでケイは不機嫌な声をだした。


「おかえり」


俺はそんなことには慣れっこなので、普通にそう返した。
侑くんが戸惑っているのが何だかかわいく見えたりもするが、
こいつも、これになれていくんだろうなって思ったら、少しばかり悔しい気持ちになった。


「…あ、ただいま、ケーキ買ってきた」

「家族の証のショートケーキかい?」

俺は冗談半分に言った。
すると「ななに言ってんの」とケイは動揺した。

可愛い。

「かわることを怯えてはいけないんだよ。ケイくん」

「馬鹿、黙れ」

「ひどい。ひどいよ。侑くん。ケイくんが反抗期だ」

「うざい」

ケイはそう言って、俺の横にケーキを投げた。


「おま、ケーキつぶれたらどうすんだよ」

「食えるって、食べもんだし、直太郎が食べたらいいし」

「な、おい、それってなんなわけ?」

「うっさい。お客さまきてんだぞ、気を使え、馬鹿」

「ケイこそ使えよ、侑くん固まってんだろ?」


どう見ても、今、ケイのイメージ壊れたんじゃないかな。
うん。きっと、壊れてる。

ケイは俺以外にはちゃんとした口のきき方するし、
ケーキも食器も投げない。
見方によっては儚げに見えたりする。

俺のこいつの第一印象もそうであった。



その日、俺はケーキを食べながら、
ケイと侑くんの話を聞いていた。

平和だと思った。





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