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ケイくん立てこもり事件から一週間が過ぎた。
「絶対に来てよ。文化祭。約束だからな」
と、か弱い俺は脅されたので、
有給休暇をとって、ケイの文化祭にきた。
なんでも劇をするそうで、
なんと、脚本はケイが書いたそうな。
そういえば、あいつ、小説書くのが好きとか、言っていたよな。
ちなみに、劇のタイトルは『あたえられるだけのひなどり』
なんとも大学生らしくない話だった。
でもケイらしい話だった。
ストーリーとしては、
わがままなひなどりちゃんが、おやどりちゃんに迷惑かけて
困らせていくギャグテイストなのに、
どこか奥深さを秘めていて、
そう、ラストの「そう、僕はあたえられるだけのひなどり」と言うセリフが
痛いほどに胸に残る作品だった。
後にカーテンコールっていうのだろうか。
劇が終わると、キャスト、とか、なんやら、ぞろぞろと舞台に並んで、
この作品について語りつつ、将来はどっかの劇団にはいるだの、なんだの、
大学生らしい、夢って言うのか、将来っていうのか、そう言ったこと語った。
眩しくて、うらやましくて、愛おしかった。
だらだらとそんなスピーチが続いて、観客もだらだらとしてきた時だった。
マイクを握った、ケイが
「脚本担当の神崎です」
と話しだした。
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