「ケイには楽しんでほしかった。俺、ケイにはケイの生き方をしてほしいと思っていた。だけど、それって、放任すぎた?」


俺は、親戚の家にいた時はいつも、気を使っていた。
だから、ケイには、そんな思いをさせたくなかった。
俺は説明した。

少しでも誤解が、ケイの孤独が、とけたらいいと思った。


「馬鹿」

ケイはそう言って、ホットミルクを投げつけようとした。

が、途中でやめた。


「わかるようにしてくれないと、俺、そんなことわからないし」

「泣くなよ。ガキ」

「…俺って、もう、大学生。ガキじゃない」

「俺みたいなおじさんからしたら、ガキだよ」


「小池さんには勝てない?」


「は?」


今のはなんなんだ。
俺は自分の耳を疑いながら、ケイを見つめた。

「何でもない。なんでもないから」

へらっと、ケイは笑った。


何年ぶりの笑顔だろうか。





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