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=神崎side=
「どうして、嫌ってくれなかったの?」
ケイはそう言った。
俺はその言葉に心当たりがあった。
俺も、昔、ケイみたいに、親戚の家に押し付けられた時に、
そんなことを考えた。
何の関心も示されない。
それはこの世で一番つらいことだと思う。
俺はそんなになるまでにも、ケイをほおっていたのだろうか?
真実はどうあれ、ケイにそんな思いをさせたのは、事実だ。
「似ていたんだ。昔の俺に」
「?」
「俺もケイと一緒で、あのパパに捨てられた」
いや、本人にそのつもりはなくても、俺はそう感じるのだから、
捨てられた、とうい表現は間違いではない。
多分、ケイもそう思っているはずだった。
俺よりも、他人を選んだ。
そうだ。
いらないと言われたようなものだった。
必要とされていない。
いっそ、嫌ってくれたほうがよかった。
中途半端なことされるぐらいなら、盛大に嫌ってほしかった。
パパのなかに
俺という人間を、少しでも大きく、残せたらいいのにと
思った。
俺にとって、パパは一人なのに、
パパにとっての子どもはおれだけじゃなかった。
それだけだった。
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