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意地を張ってみたところで、俺はトイレに行きたくなり、
部屋の扉を開いた。
そこには、直太郎の姿があった。
「ケイ」
「どいて、トイレだから」
俺は直太郎の横を通りすぎ、トイレに入り、
もしかしたら、直太郎は、俺のことを心配して部屋の前にいたのかな、とか考えた。
だけど、もしかしなくてもたまたまの出来事かもしれない。
期待は、しないでおきたい。
俺は、トイレをすますと
部屋に戻ろうとした。
「え?」
「ケイ。俺何かした?」
そこには直太郎がいた。
しょんぼりした顔をして、普段とは違うテンポで話してくる。
俺は知っていた。
もともと直太郎は、こういう人だ。
いつもお調子者みたいにふるまっているけど、本当は、
小動物のように、びくびくしている人だ。
小池さんに出会ってから、明るくなっただけで、
本当は…
「直太郎」
俺は泣き出してしまった。
でも。直太郎は何も言わずに、
そんな俺を抱きしめてくれた。
きっと、子ども扱い。
それでも、今、こうして、あんたの体温を独り占めしているっていうのは
すごくうれしかった。
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