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=ケイside=
「楽しむことを学びなさい」
あんたは俺にそう言ってくれたから、俺は楽しむことを学ぼうとした。
あんたはいつも明るくていい人のように見えたから、俺はあんたのような人間になりたいと思った。
なのに、今、あんたは傷心中。
原因はふられたから。
「な、直太郎。俺じゃ駄目かな?」
「ケイ、何を言ってるのか、わかってんの?」
「わかってて言ってるに決まってんじゃん」
「……今はそんな冗談に付き合ってられないんだけど」
「本気だって」
本当に好きだった。
直太郎のことが好きだった。
だけど、あんたはこっちを見てくれない。
小池さんに絡んだとき、初めて、直太郎が俺のことを男として見てくれて、少し、嬉しかった。
勘違いをしているようだけど、
俺、別に男が好きだとか、そんなんじゃないよ。
直太郎に振り向いて欲しかった。
心配してもらいたかった。
まだ、本当の意味では誰ともしていない。
ただ困らせたかった。
ただ気にかけてほしかった。
それだけ、だったのに。
信じてもらえなくなっても、
しかたないことをしてきたことには
変わりない。
今更、こんな歪んだ気持ちを伝えるのも、嫌かもしれない。
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