崩れることは負け?
=丹羽side=
できることなら、あなたに格好の悪いところは見られたくなかったです。
ですが、どうしても、俺、聞きたいことがありました。
「部長は、どうして、そうやって、過去を切り捨てて生きていくんですか?」
そんなの淋しいです。
「俺がこんなこと言うのは間違っていますが、やっぱり気になります」
そうやって、あなたが生きてきたのはよく知っていました。
それでも、俺、そんなの淋しいです。
「部長は、俺がいた昨日でさえ、終わったことだと片付けていまわれるんですか?」
「え?」
「そんなの嫌です。そんなの、一人とかわらないじゃないですか? 俺は、あなたの世界にいらないですか?」
「…そんなことない。そんなことあるわけない」
「あ…」
ぽろぽろと泣き出したあなたに、俺は、また傷つけてしまったのだと自己嫌悪しました。
ですが、終わったことになんてしません。
ここに刻み込んで、二度と、あなたにそんな気持ちをさせないように気をつけようと思います。
たとえ、何があろうと、こうして、過去を積み重ね、俺達は生きていきたい。
振り返っては、そんなこともあったよね、とか、笑い合いたい。
そうなんです。
あなたのしていることは、切り捨て、もしくは、消去だと俺は思うんです。
だって、そうじゃないですか。
終わったことだから、関係ないなんて、あんまりです。
淋しいです。
「忘れないでください。もう、逃げないでください」
俺にさえ、背中を向けないで。
本当の意味で愛してほしい。
俺は欲張りになるばかりでした。
本当に、本当に、あなたが、好きでした。
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