「実は俺、たまにタイムトラベルもどきをするんです。夢、として見るんですけど、本当にリアルに過去に行ったりするんですよ」

信じられないかもしれませんが、と、丹羽は言った。
だけど、俺は信じる。
信じなきゃ何も始まらない。

「それで、俺、過去の部長に会いました」

「え!? 俺に」

「はい。ちょうど俺くらいの歳のあなたです」

かわいかったですよ。
そう、丹羽は言ったけども、俺は不安で仕方なかった。
あんな泣いてばかりいた時代を丹羽に知られるのはなんだか嫌だった。

「あ、大丈夫ですよ。俺、浮気なんてしていません」

「え?」

「いくら、過去のあなたが可愛くても、それは今のあなたを知っているからそう見えるだけで、俺は部長がその、好きです」

「え、あ、その、うん」

「照れてますか?」

「そんなことないよ」

「かわいいです」

そう言って丹羽は俺に抱きついてきた。
丹羽の体温が俺を包むのが、どこか儚いような気がした。

「丹羽、ごめんね。俺なにか、丹羽にした?」

元気がないように感じて、君が、どこか悲しんでいるように感じて、俺は聞いた。





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