私たちは別に浮気をしていたわけではない。
ミロのことは好きだが、それはカミュに対する好きとは違う。ミロはただの、そしてとても良い友人というだけだ。対するカミュは私の大切な恋人。だから余計なことを知られ、変な心配をかけることも嫌だし、勘違いされることも嫌だった。

だが、こんな時間まで男と二人で会っていたなどと言えば、いくら相手がミロとはいえ、きっとカミュは気分を害すだろう。私だってカミュが誰か女の子と二人っきりで夜遅くまで会っていたとしたら嫌だ。

カミュのことを疑う気はないが、彼は優しすぎる。
相手の女の子がその気になってしまったら、と考えると恐ろしくて仕方がない。


まさかあのカミュが、わたしなんかにそんな心配をするとは思えないが、それはともかくの話だ。
恐らく私の過去最速記録を出しアテネから戻った聖域でも、足を止めることなく十二宮に向かった。頭の中ではすでに宝瓶宮に戻った後のシミュレーションがスタートしている。

こんな時間だ、いつもならプライベートルームに戻って眠っている。もし、出かけた私を待っているのなら本を読んだり、氷河君やアイザック君に手紙を書いたりしているのだろう。そうしたらどうしよう。声をかけたら、きっとカミュはこんな時間まで何処に行っていたと私に聞くにちがいない。

「ねえ、ミロ。この際日付が変わるまで天蠍宮に隠れていても良い?その後宝瓶宮に帰って正直にカミュに全部話すわ」
「もしもカミュがお前を心配して小宇宙を探ったとき、そんな真夜中に俺の宮に俺たちが二人でいることが知れたらどうするんだ」

そんな恐ろしい経験はしたくないと首を振ったミロに、私も頷くほかなかった。
私の案は、カミュが私の小宇宙を探さなければきっとうまくいくが、彼が小宇宙を探ってしまえば現状をさらに数段階悪化させるのだろう。

「昼ドラの修羅場体験は嫌だもんね」
「ああ、絶対にい…」

いやだ、とミロは言おうとしたのだと思う。しかし彼は妙に不自然に言葉を切り、一瞬表情を無くした。次の瞬間顔を青くしたミロが私の手を引く。

「なまえ、隠れるぞ!!」
「え、ちょ…ミロ?」

まだ白羊宮前なのに、一体何から隠れるのかと眉を寄せて立ち止まった私の腕をミロが思い切り引く。少し痛んだ腕に文句を言おうとした時、シベリアの凍てついた大地よりも冷たいのではないかと思うような声がかかった。

「一体何から隠れるつもりだ?」

瞬間、ミロが顔を青くした理由を悟る。
同時に私の顔からも血の気がさっと失せた。

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